Q

むし歯があっても痛くなければ放置しておいて良いですか?

A

むし歯や歯周病の歯は全身の状態が治療可能ならば治療する必要があります。
理由は歯が原因で口から離れた体の他の臓器に感染を起こす事があるからです。
これを歯性病巣感染と言います。


歯性病巣感染とは

慢性炎症(一次病巣)の毒素、細菌がアレルギー源となって、そこから遠く離れた臓器に二次的に病気を起こすことを言います。
一次病巣は、慢性の歯根の炎症・歯周病・扁桃炎・中耳炎・副鼻腔炎が多く、遠隔臓器に二次病変は、慢性腎炎・慢性関節リウマチ・リウマチ性心筋障害等の膠原病アレルギー性皮膚疾患が代表的です。
二次病変は一次病変と症状も異なり、菌も証明されません。
そのため、歯性病巣感染の存在は必ずしも決定的ではありません。
しかし、上記のような二次病変を持っている人が、歯科で原因と考えられる、歯根の炎症や歯周病の治療を徹底的に行った結果、二次病変が軽くなったり、治癒する事が経験されています。


歯の炎症が原因となって、全身的な感染症になってしまう場合があります。

一つは敗血症で、これは歯や口の感染病巣から菌が血管内に入って、遠く離れた心臓・脳・肝臓に転移性に化膿巣を形成します。
この場合は歯性病巣感染と異なり、原因の歯や口の炎症は重症で抵抗力が減退した状態で発症します。
もうひとつは、感染性心内膜炎です。一般に歯を抜いたり歯石除去をすると、高い頻度で血管内に菌が入ります(菌血症)が、これは健康な人では一過性で心配ありません。菌は血中からすぐに消失します。しかし、心臓弁膜症や人工弁膜の人では菌血症から感染性心内膜炎の発症や増悪を招く事があります。

口腔ケアとは

Q-01

口腔ケアとは何ですか?

A-01

口腔ケアとは、むし歯や歯周疾患などの口腔の疾病予防と、疾病や障害によって失われた口腔の機能を回復させ心身共に健康な状態に近づくようにするための介護(ケア)のことです。

Q-02
口腔ケアとは、どのようなことをするのですか?
A-02
具体的には
  1. 口腔清掃
  2. フッ素化合物の塗布
  3. 義歯の装着と手入れ
  4. 咀嚼
  5. 摂食・嚥下
  6. 口臭の除去
  7. 口腔乾燥の防止
  8. 口腔の痛みの軽減
  9. 口腔出血の防止
  10. 歯肉、頬部*のマッサージ
  11. 咀嚼筋*、口腔周囲筋、舌の運動
  12. リハビリテーションとしての言語訓練
  13. 食事の介護
  14. 口腔の検診
  15. 口腔の美容

以上の事が含まれます。


口腔ケアの目的は、むし歯や歯周疾患(歯槽膿漏)の予防だけでなく

  1. 正常な味覚を保ち、食欲増進を促す。
  2. 生活のリズムを整える。
  3. 自ら体を治すという意欲の高揚を促す。また、摂食・嚥下に問題のある人にとっては
  4. 疾病や障害のある口腔器官の機能回復を期待し、将来、口から食事する為の準備になる。
  5. 誤嚥性肺炎の予防になる。
Q-03
口腔ケアをしないとどうなりますか?
A-03

口腔にはさまざまな役割があります。大きく分けると、食べる事・話す事・息をする事等です。また前歯が少し欠けただけでも顔貌に大きな影響を与えるため、精神的にも負担になることがあります。このように口腔の果たす役割には、機能的な問題以外にも精神的な問題を併せ持つ特徴があります。病気や障害など種々の原因で口腔の機能が維持できなくなったり、あるいは低下したような場合には、その機能の維持・改善・回復を図る必要があります。


具体的には次のような障害が発生します。

口腔の問題として

  1. 食物が食べにくくなる。
  2. むし歯になる(悪化する)。
  3. 歯周病になる(悪化する)。
  4. 歯や歯肉に疼痛*や出血が見られる。
  5. 口臭が強くなる。
  6. 口腔粘膜や口唇が乾燥したり切れて出血したりする。
  7. 爽快感が欠如して気持ちが悪い。

全身に与える問題として

  1. 誤嚥性肺炎
  2. 病巣感染(口腔の病気が原因で他の部位に病気が発生すること)
  3. 口腔そのものに病変が発生する(口内炎、悪性腫など)

介護する視点から見ると、

  1. 食事時間が長くなる。
  2. 調理に手間がかかる。
  3. 口が臭くて困る。
  4. よく発熱する。
Q-04

口腔状態の悪化はどのような条件があると起こりますか。

A-04

口腔の状態が悪くなる具体的条件として、口腔に対する関心度や生活習慣等に加えて加齢的変化・罹患疾病(糖尿病等)・服用薬剤などが複雑に絡み合ってきます。また自分で歯磨き、うがいなどができなくなるようなリウマチ・筋ジストロフィー・脳血管障害などが進行したり、痴呆などの精神障害があると口腔状態は悪くなります。要介護高齢者では、介護や看護をしているつもりでもできていないことがよくあります。口腔清掃が十分にできなくなると口臭がひどくなり、むし歯や歯周病が発生したり、歯が折れたり、抜けたり、義歯が破損したりします。また、治療されていても充填物(詰めた物)が取れたり、壊れたりすることもあります。

Q-05

口腔ケアをおこなう時のポイントは?

A-05

口腔内をよく観察して次の事柄に注意してください。

症状として

  1. 疼痛の有無
  2. 出血の有無
  3. カンジダの有無
  4. 腫の有無
  5. 舌苔の有無
  6. 乾燥状態の有無
  7. 口臭の有無
  8. 義歯などに起因した褥創や潰の有無

状態として

  1. 歯の有無と残存状況
  2. 義歯の有無とその形態
  3. 修復物やブリッジの状況
  4. 歯や修復物の鋭縁の有無

清潔度として

  1. 清掃状態の良・不良
  2. 食物残渣の有無

機能として

  1. 麻痺の有無
  2. うがいの可否
  3. 開口・閉口障害の有無
  4. 摂食・嚥下障害の有無

歯ブラシの手入れと保管

義歯の手入れと保管

口腔清掃

Q-06

口腔清掃とは何ですか?

A-06

目的はプラークコントロール(歯垢除去)です。プラークは歯の表面に付着したヌルヌルするクリーム色の細菌と細菌の産生物(グルカン)で、うがいなどの科学的方法だけでは除去できないので歯ブラシなどを使って物理的な方法で除去を行います。

Q-07

歯ブラシの選び方は?

A-07

植毛部は小さめ(前歯2本分程度)で、毛は柔らかめでナイロン毛の物を選びます。柄は持ちやすいものを選びますが、麻痺等でうまく握れない人のには市販のラバーホルダーやゴムホースを利用して柄を太くして握りやすくしたり、割り箸等を利用して柄を長くしたり、柄に熱を加えて曲げて口のなかに届きやすくなるように工夫します。

Q-08

歯ブラシの方法は?

A-08

フォーンズ法(描円法)、バス法、スクラビング法等色々なやり方がありますが、歯ブラシの目的はプラークの除去なので方法にこだわって磨き残しがあっては意味がありません。効果的に歯ブラシを行うには各人の口腔状態によって違ってくるので歯科医師や歯科衛生士に指導してもらうことが望ましいです。

Q-09

もう少し具体的に説明してください。

A-09
状況に応じた口腔清掃の方法について説明します。
自分で歯磨きができる人(自立)には、口腔内の状況を把握してもらい、歯磨きの重要性を理解してもらいます。歯磨きが上手にできる所と、できない所を知ってもらい励ましや見守りをして、時にはチェックしアドバイスをしてあげます。
自分で磨けるが旨く磨けない人(一部介助)には、片麻痺があったりリウマチやパーキンソン等で筋力が低下したり、加齢や痴呆等によって理解力が低下している人があげられます。介助者は口腔内をよく観察し、肩、肘の動く範囲、手指の震えの程度を見て歯ブラシの柄を工夫します。コップも口まで持ってこられない場合があるので一部をカットして鼻にあたらないような工夫も必要です。
健側*に歯ブラシを持って歯を磨きます。自分の体の麻痺部分やその周囲の空間を無視する場合は、麻痺側を意識的に先に磨くようにさせます。麻痺側は知覚障害もあるので強い力で粘膜や歯肉を傷つけないように注意し、麻痺側口角から唾液や汚水が流れ出ることがあるので洗面台に前傾姿勢をとらせるとよいでしょう。最後に磨き残しを補います。
座位*になれず臥床*のまま行うときは、麻痺側を上にした側臥位*で行います。麻痺側頬部に汚水が流れやすいので注意し、必要があれば吸引するか巻綿子などで吸い取ります。
歯磨き動作は複雑なので、特に利き腕交換している場合は観察、指導が必要です。患者自身の運動機能を生かすように、また、自分自身でも行わせることは、運動機能のリハビリテーション、精神的な自信の回復にもつながるので、歯磨きに対する動機づけを行うことが必要です。

寝たきりの人には、介助すれば座位・半座位(ファーラー位)可能な人、意識障害のない人、ある人、経管栄養、気管切開等、状態は様々です。筋力や体力、気力が衰えている場合も多く、仰向けのままでは舌根も落ち込みやすく食物や水などを摂取したり吐き出す機能も低下します。また、寝たきりの人は特に唾液の分泌が少なくなるために口腔内の自浄作用が低下し、汚れやすくなるので口腔清掃は不可欠です。ただ、いずれの場合も本人の最近の健康状態を把握し、本人や家族の意見を大切にしながら行うことが重要です。
(i)

意識障害のない人の場合
本人や家族の意見を大切にしながら本人にとって疲れない体位(できれば座位か半座位、無理な場合は側臥位)をとり、麻痺がある場合は麻痺側を上に、麻痺がない場合は利き腕を上にします。口腔内(食物残渣、プラーク、粘膜、舌、口唇、口臭など)を観察し、歯ブラシが届く部分まで静かにブラッシングし届きにくいところや孤立している歯の回り、頬粘膜の清拭は巻綿子や綿棒を使用します。
いずれもイソジンガーグルなどにひたして使用します。
舌ブラシに10%オキシドールをつけて静かにブラッシングした後、吸い飲みや注射器により口腔内がきれいになるまでうがいをします。
市販のスポンジブラシ(トゥースエッテ)も便利です。
あくまでも本人や家族の同意のもとに行い、体調に合わせて無理をしないようにします。次にやることを伝えながら本人と呼吸を合わせ、状況に応じて途中で休むことも必要です。
口腔清掃の効果ばかりに注目せずに本人の顔色や家族の意識にも気を配るようにします。

(ii)

重度の嚥下障害や意識障害のある人の場合は口腔清拭を行います。体位を整え口を開かせ(必要に応じて開口器を使用)、巻綿子にぬるま湯をつけて水分を切ってから汚れを拭き取り口腔内をマッサージします。指にガーゼを巻いて直接行ってもよいでしょう。口の回りを拭き必要に応じてリップクリームを塗ります。
毎回、汚れの程度や歯肉の出血の有無、舌が汚れていないかなど、注意して観察します。開口器は割り箸にガーゼを巻いたり、ゴムホースを利用して作ります。
市販のスポンジブラシ(トゥースエッテ)も便利です。

(iii)

経管栄養をうけている人は口から食事をしないので食べ物のカスは付きませんが唾液にはタンパク質が含まれているので、清潔にしないとネバネバして不快で口臭の原因になります。また、食事をしないと唾液の分泌が減少し自浄作用が低下し、食事による歯肉への刺激がなくなるので歯肉が退縮してしまいます。
嚥下障害があることが多いので姿勢(少し前かがみの座位、座位が無理な場合は横向き)に注意し、口腔清掃時に管が刺激されて吐き気を催すことがあるので静かに丁寧に行い、栄養注入直後は避けます。

(iv)

気管切開している人は口腔内の自浄作用が低下して細菌が繁殖しやすくなっているので口腔清掃が必要になります。
本人に口腔清掃を行うことを説明し、気管切開チューブのカフ圧*を高く(40mmHg)し、側臥位として顔をしっかり横に向けます。自分で開口できない場合は開口器を使ってしっかりと開口させ、注射器で水などの洗浄液を1回に15~20ml注入し洗浄しながら同時に口腔内を吸引します。歯ブラシにイソジンガーグルをつけてブラッシングをし再び洗浄液で口腔内を洗浄します。体位を元に戻し、カフ圧を元に戻します。
一度に行うと疲れるので2~3回に分けて行います。

(v)

痴呆の人は「介護への抵抗」を示すことがあり、体に触れられるケア、特に口腔ケアに対しては強烈な抵抗を示すことがしばしばあります。できるだけ今あるリズムを崩さないようにして無理強いせずに気長に行うことが必要です。
※注水しながら吸引する電動歯ブラシも使い勝手が良いでしょう。

Q-10

歯ブラシだけでプラークコントロールは可能ですか?

A-10

歯ブラシだけでは歯と歯の間のプラークを除去しにくいので補助具*を使ってプラークコントロールを行います。歯と歯の間の清掃を歯間清掃と言い、デンタルフロス*・糸楊枝や歯間ブラシを使います。歯間ブラシは歯肉がひけて歯の間の隙間が広くなったところにさしこんで使い、デンタルフロスは歯間ブラシが入らないところにしごくように入れて歯の側面を2~3回上下させて使います。

Q-11
歯ブラシの保管はどのようにすれば良いですか?
A-11
歯ブラシの保管は自分で管理する場合と介護者が一括管理する場合とで異なります。
自分で管理する場合は、使った後は水道水でよくすすぎ、毛先を乾燥させるように保管します。
介護者が一括管理する場合は歯ブラシに所有者名を明記し、感染性疾患*の有無を確認して、それぞれの感染症ごとに分けて保管します。洗浄は十分な流水下で、水洗し、他の人の歯ブラシと接触しない時は消毒の必要はありませんが、少しでも接触の可能性があるときは消毒は必要でしょう。
消毒は薬液消毒*が適しています。
Q-12

どのような薬液消毒をするのですか?

A-12

薬液消毒の一例
十分な水洗→塩化ベンザルコニウム・グルコン酸ヘキシジン・両面界面活性剤の3種を順に1ヶ月毎に使用(耐性菌の出現を考慮して)して1時間浸す→十分水洗→通気のよいところに立てて保管。

※歯ブラシは毛先がばらけてきたら交換の時期です。
1ヶ月を目安に新品と交換するのが理想です。

Q-13

歯磨き剤はどんな物を使えば良いですか?

A-13

色々なタイプの物が市販されています。形状も「練り歯磨き剤」「液状歯磨き剤」「洗口剤」、効力も「歯周炎の予防」「知覚過敏(歯がしみる)の予防」「フッ素配合によるむし歯予防」などさまざまです。好みで選べばよいでしょう。歯磨き剤は必ず使わなくてはならないというものではありませんが、使った場合の効果は

  1. プラークコントロールの程度は優れている。
  2. ブラッシング後のプラークの再付着量が少ない。
  3. フッ素配合によるむし歯予防効果がある。
  4. 口臭の防止効果がある。
  5. 清涼感が得られる。

等があげられます。

※歯根露出がある場合は積極的にフッ素配合物を利用すると、むし歯予防効果があるでしょう。
歯磨き剤を使用すると発泡作用によって洗口回数が増えるので、寝たきりの人には注意して使う必要があり、意識障害がある人には使わないほうがよいでしょう。

Q-14

プラークと歯石は違いますか?

A-14

歯石はプラークが石灰化(硬くなった状態)したもので、歯石そのものにはプラークのような毒性はありませんが、歯ブラシによる除去は不可能で、プラークが歯石表面に沈着しやすいので歯科医師、歯科衛生士によるスケーリング(除石)が必要です。歯石沈着はプラーク沈着が原因でおきるので、十分なプラークコントロールが歯石沈着防止に必要です。